管理室ではインターネットに関する質問や相談を本当によく聞きます。
りす丸も自分なりに調べてわかりました。
「マンションの光回線は早くない」これが結論です。
それは、同じ光回線でも、マンション全体をカバーしている配線方式の違いが原因です。
正直に言います。
管理員に相談しても、管理組合に要望しても、プロバイダを変えても、この問題は根本的に解決しないケースが大半です。
今回の記事では、マンションのインターネットが遅い本当の理由を、現役管理員の視点で仕組みから解説します。
【この記事でわかること】
- マンションの光回線が「遅い」本当の理由
- 配線方式3種類(光配線・VDSL・LAN配線)の違い
- なぜ築古マンションにVDSLが普及したのか─歴史的な背景
- VDSLを光配線方式に交換するのが「きわめて難しい」理由
- 個人・管理組合それぞれができる現実的な解決策
マンションの光回線が遅い本当の理由は「配線方式」にある
「このマンションは光回線導入済みって説明されました。」
この言葉に管理員はいつも悩まされています。
たしかに勤務しているマンションは「光回線導入済み」です。
しかし、実はマンションに引き込まれた光回線が各住戸に配線される方法が3種類あります。
そして、その配線方式によって実際の回線スピードは大きく左右されるのです。
マンションの光回線には3つの配線方式がある

| 配線方式 | 共用部→各戸の配線 | 理論速度上限 | 実態・特徴 |
|---|---|---|---|
| 光配線方式 | 光ファイバー | 最大1Gbps | 最も速く安定。新築・大規模改修後のマンションに多い |
| VDSL方式 | 電話線(メタル線) | 最大100Mbps (実測20〜30Mbps) | 築古マンションに多い。プロバイダを変えても改善しない |
| LAN配線方式 | LANケーブル | 最大1Gbps (実測30~300Mbps) | ケーブルの世代次第。複数住戸で共有するため、同時使用が多いとスピードは減衰する。 |
-インターネットの用途ごとの実測速度の目安(推奨値)-
- メール、WEB閲覧:1~10Mbps
- YouTube HD :5~10Mbps
- 4K動画 :25Mbps以上
- オンライン会議 :20Mbps~50Mbps以上
- オンラインゲーム 30Mbps~100Mbps以上
光配線方式
光ファイバーケーブルを各住戸まで直接引き込む方式です。
光信号をそのまま受け取れるため、理論上の最大速度は1Gbps前後と高速で、速度低下が起きにくいのが特徴です。
戸建て向けの光回線と同じ仕組みのため、マンションでも快適な通信環境が期待できます。ただし、建物の構造上、導入できない物件もあります。
VDSL方式
建物の共用部まで光ファイバーを引き込み、そこから各住戸へは既存の電話回線(メタル線)を使って通信する方式です。
電話線を流用できるため工事費が安く済む反面、電話線部分がボトルネックとなり、最大速度は実測20Mbps程度にとどまります。
LAN配線方式
建物の共用部まで光ファイバーを引き込み、そこから各住戸へはLANケーブルで接続する方式です。
最大速度は100Mbps〜1Gbps程度で、VDSL方式より高速なケースが多いです。
ただし、マンション内の回線を住民全員で共有するため、利用者が集中する時間帯は速度が低下しやすいという特性があります。
「光回線導入済み=高速」とは限らない

重要なポイントは、「光回線マンション」という表現は建物まで光ファイバーが来ているという意味にすぎず、室内への配線方式までは保証していないということです。
マンション内に設置されたMDF(主配線盤)までは光回線が敷設されていますが、その先の配線方式が3種類に分かれています。
そして、ある程度築年数が経過しているマンションでは、光配線方式ではなく、VDSL方式もしくはLAN配線方式が主流になっています。
現在は光回線方式とVDSL/LAN配線方式がほぼ半々
近年建設されたマンションでは光配線方式が主流となり、詳細な数値資料はありませんが現在では光配線方式とVDSL/LAN配線方式の比率は、ほぼ半々程度といわれています。
これは、NTTが2023年に新規VDSL方式の申込受付を停止したことが大きく影響しています。そのため、2023年以降に建築されたマンションの多くは光配線方式を採用することになりました。
しかし、逆に考えれば、2022年以前に竣工したマンションは、VDSL/LAN配線方式が主流であったとも考えられます。
もしも、これから2022年以前に竣工したマンションの購入や賃貸入居を検討しているのであれば、配線方式は必ずチェックしてください!
りす丸「光回線導入=速い」は誤解のもと。配線方式をしっかりと確認しましょう。
なぜVDSL方式が普及したのか?マンション通信設備の歴史


住民から「なぜうちのマンションはこんなに遅いんですか」と聞かれるたびに、りす丸も最初はうまく答えられませんでした。
「仕様なので」では納得してもらえない。
そこで自分なりに調べてみると、これが単なる技術の問題ではなく、20年以上前の「配線の決め方」に原因があることがわかってきました。
- 理由1:既存の電話線を活用できたから
-
2000年代前半、インターネットをマンションに導入しようとしたとき、各部屋にはすでに電話線が通っていました。
VDSLはその既存の電話線をそのまま流用できる技術です。新たなケーブルを一切敷設せずに「インターネット対応マンション」と宣伝することができました。 - 理由2:光ファイバーの後付け工事は難しかった
-
光ファイバーケーブルは銅線やLANケーブルと異なり、柔軟に曲げることができません。
曲げてよい角度(R)が厳密に決まっているため、既存の建物の壁や床に後から通すことが極めて困難です。
各階への配線には専用のスペースが必要で、築年数が経過したマンションでは設備的に対応できないケースがほとんどです。 - 理由3:当時は100Mbpsでも十分高速だった
-
当時のインターネット利用といえばメールとウェブ閲覧が中心でした。
VDSL方式の20〜30Mbpsは「十分すぎる速度」だった時代です。
管理組合もデベロッパーも、20年後にテレワーク・4K動画・ビデオ会議が当たり前になる未来を想定していなかった。
居住者の将来の速度ニーズは、誰の計算にも入っていませんでした。



早くない光回線、しかし竣工当時は最先端の設備だったのは間違いありません
既存マンションで主流のVDSL方式が遅い3つの理由
3つの方式の中で最も問題になりやすいのがVDSL方式です。なぜ遅いのか、理由を整理します。
- 理由1:電話線による物理的な速度限界
-
VDSLは共用部から各部屋までの配線に、古くから建物に敷かれている電話線を流用します。電話線はもともとインターネット通信を想定して作られていないため、光ファイバーと比べて速度に大きな制約があります。
どれだけ高速なプロバイダと契約しても、この最後の区間が電話線である限り、速度は最大100Mbpsが上限。
実際の計測値では20〜30Mbps程度にとどまるケースが多いです。 - 理由2:ノイズの影響を受けやすい
-
電話線は光ファイバーと異なり、電磁波などのノイズ干渉を受けやすい素材です。
電子レンジやテレビなど電波を発する家電が近くにあると、通信品質がさらに不安定になることもあります。
- 理由3:マンション全体で回線を共有している
-
VDSLは1本の光回線をマンション全戸でシェアする構造のため、回線の混雑が生じることもあります。
この点は、LAN配線方式も同様です。
管理員も配線方式を知らないことがある


りす丸がもう一つ実感していることがあります。
この光回線のからくりをきちんと説明できる管理員が意外と少ないという事実。
住民から質問があった時に、
「夜間などで利用者が集中すると遅くなる」
「ルーターやモデムを交換すれば改善する」
「プロバイダーを替えれば早くなる」
などの説明はNGです。
もちろん、回線速度に影響する要素の一つではありますが、根本原因は配線方式です。
実は、これまで4棟ほどのマンションで管理員を勤めていますが、光回線の配線方式に関する説明やマニュアルの提供は1回もありませんでした。
管理会社のフロント営業に相談しても、あいまいな説明の場合が多く、つい、思い込みと勘違いで回答してしまう時も…
りす丸も訪問されるNTTの技術者に回線に関して根掘り葉掘り話を聞いて、自分なりに勉強しました。



マンションの内見で「光回線導入済みです」と言われたら、「配線方式は?」と必ず訪ねるのが重要です。
VDSL方式から光配線方式への変更はなぜ難しいのか
それでは、既存のマンションでVDSL方式を光配線方式に変更して回線速度をアップさせることはできるでしょうか。
Webなどで検索をすると、「VDSLから光配線方式に敷き替え」の記事は数多く見かけます。
そして、NTTでも「VDSLから光配線への交換工事無料」を謳っています。
しかし、りす丸は「変更するのはきわめて難しい」と実感しています。
光ファイバーの配線ルート確保が難しい
NTTが「無料」と謳うのはあくまで配線ルートが確保されている前提、「光ファイバーの線材そのものと通線作業の費用」です。
導線できない場合の「バイパス(新規ルート)を作る建築・電気工事」はマンション側の負担になるのが原則です。
既存マンションでは、このルート確保がきわめて難しく、光ファイバーが通らないケースが多発します。
また、敷設ルートの有無を確認するための調査にも高い経費が発生します。
管理組合の合意形成が必要になる
VDSLから光配線への敷き替えは間違いなく総会承認案件です。しかし、その前にまずは理事会での推進の決議が必要です。
しかし、理事会で「光配線方式への敷き替え」の決議を得るのはとてもハードルが高いのも事実です。
【理事会でのハードル】
- 理事会のメンバーがインターネット回線の遅さを問題視していない
- 現状使用できるものを交換するのは無駄があるのではないか?という疑問
- そもそも費用が高額すぎる
- 調査から工事まで手間も時間もかかりすぎる
インターネット回線速度の問題は、りす丸のマンションでも理事会で何度か協議されました。
しかし、上記のようなハードルが高く、結果、結論は先送りでした。
光回線スピード問題の解決方法は2つある
光回線のスピード問題、これは簡単に解決はできません。しかし、このまま放置するべき問題でもありません。
そこで、りす丸なりに解決方法を2種類考えました。
1.次回の大規模修繕工事で対応する
光配線方式への敷き替えは、事前調査も含めてかなり大がかりな工事となることが予想されます。
そのため単独で実施するのは難しい。おすすめは、次回の大規模修繕工事の主要な付帯工事として対応する方法です。
大規模修繕工事であれば事前に建物診断を実施するので、その際に光配線のルート調査ができます。また、壁面に足場を組むので新規配管の設置なども可能です。



大規模修繕工事はおおむね15年に1回です。そのチャンスを生かせば解決できます!
2.ホームルーターの活用
回線速度を個人の力で改善するのであれば、ホームルーターの活用がおすすめです。
5Gホームルーターであれば設置工事は不要、置くだけでVDSL以上の回線スピードが確保できます。
さらに、メッシュWi-Fiを組み合わせれば、コンクリート壁のマンションでも快適なインターネット環境の構築が望めます。
ホームルーターは、本体が届けばコンセントに差し込むだけ。工事不要で即インターネットを楽しめます。
\りす丸おすすめのホームルーター2種をご紹介します。/
「いきなりホームルーターの導入は少し心配」という方には、まずはレンタル機器で試してみるのもおすすめです。
おきらくホームWI-FIなら、ソフトバンクAir・WiMAX 5Gのどちらもお試し可能です。
ホームルーターの格安レンタル、そのまま継続使用も可能!
まとめ:マンションの光回線が遅い原因は建物全体の問題


マンションのインターネットが遅い原因は、プロバイダでもルーターでもなく、建物に張り巡らされた配線方式にあります。
光配線方式への敷き替えは、理事会の合意形成から調査・工事まで、実現までに数年単位の時間がかかることも珍しくありません。「言えばすぐ直る」という話ではないのが正直なところです。
とはいえ、「管理組合が動くまで待てない」という方も多いはず。
次回の記事では、配線方式に左右されず個人の力で今すぐ改善できる方法として、ホームルーター+メッシュWiFiの選び方・使い方をマンション特有の事情も踏まえて詳しく解説します。



ホームルーター+メッシュWifiの最適活用法は次回の記事で詳しく解説します!
マンションの光回線についてよくある質問
- 光回線なのにマンションのインターネットが遅いのはなぜですか?
-
光回線が建物まで導入されていても、各住戸への配線方式がVDSL方式やLAN配線方式の場合は速度が制限されることがあります。
特にVDSL方式では電話線を利用するため、光配線方式と比較すると通信速度が大きく低下する場合があります。 - VDSL方式はどのくらい遅いのでしょうか?
-
VDSL方式の理論上の最大速度は100Mbpsですが、実際には20〜30Mbps程度になるケースも少なくありません。
メールやWeb閲覧であれば問題ありませんが、4K動画視聴やオンラインゲーム、複数人での同時利用では不満を感じることがあります。 - プロバイダを変更すれば回線速度は改善しますか?
-
混雑状況によって多少改善するケースはありますが、配線方式そのものが原因の場合は大きな改善は期待できません。
特にVDSL方式では、電話線部分がボトルネックになるため、プロバイダ変更だけで根本的に解決することは難しいでしょう。 - マンションの配線方式はどうやって確認できますか?
-
契約している回線事業者へ問い合わせる方法が最も確実です。
また、室内に設置されている通信機器や管理会社への確認によっても調べることができます。
中古マンションの購入や賃貸契約前であれば、「配線方式は何ですか?」と確認しておくことをおすすめします。 - ホームルーターを導入すれば速度は改善しますか?
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VDSL方式のマンションでは改善する可能性があります。
ただし、ホームルーターは携帯電話回線を利用するため、建物の構造や電波状況によっては十分な速度が出ない場合もあります。
導入前にエリア状況や電波状況を確認することが大切です。










