マンションの防災準備の基本は「在宅避難」は最低3日間、可能であれば7日間を在宅で過ごせる備えが推奨されています。
しかし、マンションの住民からは「防災用品を揃えたいけれど、置き場所に困っている」というご相談をよく受けます。
戸建てのお宅なら、納戸や軒下収納、ガレージといった「とりあえず防災グッズを詰め込んでおける場所」がありますが、マンションにはそもそもそうしたスペースがありません。
「在宅避難用の備蓄はきちんと用意したい」
「マンションの部屋の中に保管スペースを確保するのは困難」
この2つの矛盾を解くヒントになるのが、「フェーズフリー」という考え方です。
【この記事でわかること】
- フェーズフリーとは何か、そしてなぜ”備えない防災”と呼ばれるのか
- マンション特有の収納問題を、フェーズフリーの考え方がどう解決するか
- フェーズフリーを取り入れることで得られる具体的なメリット
- 電源・水・照明などカテゴリー別、フェーズフリー備蓄品の選び方
マンションの防災備蓄に「フェーズフリー」が必要な理由

マンションで防災備蓄を考えるとき、意外と大きな問題になるのが「保管する場所」です。
一戸建てと比べて収納スペースが限られるマンションでは、非常食や飲料水、簡易トイレ、懐中電灯、ポータブル電源などをすべて「災害時専用」として揃えると、かなりのスペースが必要になります。
さらに、防災用品は備えて終わりではありません。
食品には消費期限があり、電池やバッテリーには使用・充電状態の管理が必要です。長期間しまい込んだままにしていると、いざというときに「期限が切れていた」「充電されていなかった」「使い方が分からない」ということも起こり得ます。
そこで注目したいのが、普段の暮らしで使っているものを、災害時にもそのまま活用するという考え方です。
たとえば、
- 普段から使っているウォーターサーバーを断水時の備えにする
- キャンプで使うLEDランタンを停電時の照明にする
- 普段からポータブル電源を使い、停電時にも活用する
- 日常的に食べる食品を多めに購入して備蓄する
といった方法です。
これなら、防災用品を「非常時までしまっておく」のではなく、日常生活の中で使いながら、自然に災害への備えを維持できます。
特にマンションでは、限られた収納スペースを有効に使いながら、無理なく備蓄を続けることが重要です。
そこで役立つのが、「フェーズフリー」という考え方です。
フェーズフリーとは?「わざわざ備えない」防災

フェーズフリーは、ひとことで言うとこうです。
フェーズフリーは、“わざわざ備えない”防災
もちろん、何も準備しなくていいという意味ではありません。
普段の生活で使っているものが、そのまま非常時にも役立つようにする—これがフェーズフリーの考え方です。
2014年に社会起業家の佐藤唯行氏が提唱し、2018年には一般社団法人フェーズフリー協会が発足。「常活性」を筆頭とする5つの原則にもとづいた認証制度も運営されています。
| 使うタイミング | 実態 | |
|---|---|---|
| 従来の防災準備 | 非常時だけ使う | 防災リュックにしまい込み、非常時まで押し入れで眠らせておく |
| フェーズフリー | 日常と非常時の境界がない | 日常生活の普段使いで活用できるアイテムであり、かつ非常時にも有効 |
フェーズフリーの3つのメリット

防災備蓄品を揃える際に、フェーズフリーを意識することで3つのメリットが生まれます。
- メリット① 防災と日常生活を一体化できる
-
「防災のためだけのもの」を増やさず、普段使っているものを災害時にも活用する。
- メリット② 保管スペースとコストを効率化できる
-
日常用と非常用を別々に用意するのではなく、一つのものを兼用する。
さらに、普段使いしていれば「期限切れ・充電切れ・動作不良」に気づきやすいというメリットもあります。 - メリット③ 災害時のQOL(生活の質)を維持しやすい
-
普段から使い慣れたものを災害時にも使えるため、生活環境の変化によるストレスを抑えられる。
マンションで実践するフェーズフリー備蓄
1. 電源・照明|暮らしと情報を維持する
| アイテム | 非常時の役割(災害時) | |
|---|---|---|
| ポータブル蓄電池 | ベランダ作業・リビングのPC充電・インテリア節電 | アウトドア・車中泊での利用、PC、スマホ充電 |
| LEDランタン | ベッドサイドの読書灯、ベランダのナイトライト | 停電時の部屋全体の明かり(影ができにくい拡散光が最適) |
| ソーラー充電式 センサーライト | 玄関・廊下の足元灯、クローゼットの明かり | 停電時でも太陽光で自動充電・点灯する廊下・トイレ用の安全灯 |
2. 水・トイレ・衛生|マンションで特に重要な備え
マンションでは給水方式によっては、停電で給水ポンプが止まると水が使えなくなる恐れがあるため、最優先で対策したい分野です。
| アイテム | 日常の使い道(平常時) | 非常時の役割(災害時) |
|---|---|---|
| ウォーターサーバー (ボトル式) | 毎日の飲用・料理・お茶 | 断水時の貴重な飲料水・調理用水 |
| 簡易トイレ | キャンプやアウトドア、旅行時の渋滞対策など | 断水時のトイレ対策 |
| 防臭袋(BOSなど) | ペットのフン処理、生ゴミのニオイ対策、おむつ処理 | 断水時の簡易トイレ用ゴミ袋(密閉して悪臭と雑菌を防ぐ) |
ローリングストックから始めるフェーズフリー防災
「ローリングストック」という言葉は、もうご存知の方、実践されている方も多いと思います。
普段食べている食品を少し多めに買っておいて、食べたら買い足す。賞味期限が来る前に自然と消費されるので、気づいたら備蓄が完成している、という食料備蓄の方法です。
実はこの考え方、食品だけにとどめておくのはもったいないんです。
「日常的に使うものを、少し多めに・少し良いものに置き換えておく」という発想を、暮らし全体に広げてみる。それがフェーズフリーの発想です。
フェーズフリー備蓄を成功させる 5つのポイント
- ①「普段使い」で押し入れ放置と放電を防ぐ
-
日常的に使うことでバッテリー残量を常に把握。いざという時の「動かない」を回避します。
- ②1台で何役にも使える「多用途性」重視
-
「照明+モバイルバッテリー」「収納BOX+サイドテーブル」など、1台多役でモノを減らします。
- ③「在宅避難」を前提にした快適な環境づくり
-
エレベーター停止に備え、自宅での生活レベル(電源・衛生・温かい食事)を維持できるアイテムを選びます。
- ④ベランダ・共用部の規約を守るコンパクトさ
-
避難経路を塞がないよう、ソーラーパネルや折りたたみ機器は「サッと出してサッとしまえる」サイズ感に。
- ⑤「縦積み・スリム設計」で空間を有効活用
-
奥行きの浅いパントリーやクローゼットにも収まる、スタッキング(重ね置き)可能な形状を選びます。
\フェーズフリーな在宅避難準備品を現役管理員の視点から”重要度順”にピックアップしました/
まとめ|マンション防災にフェーズフリーを取り入れる
マンションでは、防災委員会や防災マニュアルなど「共助」の仕組みも重要です。
しかし、大規模災害の直後は、まず自分と家族の生活を守る「自助」が基本になります。
だからこそ、特別な防災用品を大量に保管するのではなく、普段の暮らしそのものを災害への備えにつなげるフェーズフリーという考え方が役立ちます。
マンションでの災害時は、まず3日間は”自助”つまり、それぞれのご家庭での備蓄を活用することが前提になります。
しかし、備える物量が増えれば増えるほど、収納スペースの問題が発生します。
そして、結局「奥にしまったまま」になりやすい。
備えたはずなのに、「いざという時には劣化して使えない」これでは本末転倒です。
フェーズフリーは、この「備えれば備えるほど手間とリスクが増える」という悪循環を避けるための、一つの現実的な選択肢だと私は考えています。
りす丸フェーズフリー備蓄品は、マンションの日常生活の楽しさのアップにつながります
フェーズフリーについてのよくある質問
- フェーズフリーとは何ですか?
-
フェーズフリーとは、普段の生活で使っているものを、災害などの非常時にもそのまま活用する考え方です。
防災用品を非常時までしまっておくのではなく、日常生活の中で使いながら、自然に災害への備えにつなげます。 - フェーズフリーと普通の防災備蓄は何が違いますか?
-
従来の防災では、非常時に使うものをあらかじめ用意して保管しておくことが基本です。
一方、フェーズフリーでは、普段から使っているものを災害時にも活用します。
例えば、普段使っているLEDランタンを停電時の照明として使ったり、ウォーターサーバーの水を断水時の飲料水として活用したりする方法があります。
- マンションでフェーズフリーが重要なのはなぜですか?
-
マンションは戸建てに比べて収納スペースが限られるため、防災用品をすべて非常時専用として保管すると、置き場所の問題が生じやすいためです。
普段使っているものを災害時にも活用すれば、日常用と非常用の物品を別々に用意する必要がなくなり、限られた収納スペースを効率的に使えます。
- フェーズフリーにすると防災用品を用意しなくてもいいのですか?
-
いいえ。フェーズフリーは「何も準備しなくていい」という考え方ではありません。
在宅避難に必要な防災備蓄を準備したうえで、普段使っているものを災害時にも活用できるようにする考え方です。
- フェーズフリーにはどんなメリットがありますか?
-
主なメリットは3つあります。
・防災と日常生活を一体化できる
・保管スペースとコストを効率化できる
・災害時のQOL(生活の質)を維持しやすい
さらに、普段から使っていれば、食品の期限切れやバッテリーの充電切れ、機器の動作不良などにも気づきやすくなります。 - ローリングストックもフェーズフリーですか?
-
ローリングストックは、フェーズフリーの考え方を理解する身近な例の一つです。
普段食べる食品を少し多めに購入し、食べた分を買い足すことで、日常生活を送りながら備蓄を維持できます。
この「日常的に使うものを、災害時にも活用する」という考え方を食品以外にも広げていくのが、フェーズフリーの発想です。










