【現役管理員が解説】マンション漏水トラブルの責任の所在と保険対応

漏水トラブルの保険対応と責任の所在

突然、マンションの天井から壁を伝って水漏れが発生
マンションではよくあるトラブルとは聞いていたけれども、まさか自分の部屋で発生するとは…
「誰が水を止めてくれるの?」
「水漏れした天井や壁は誰が直してくれるの?」
「復旧工事や濡れた家財の賠償はどうなるの?」

わからないことが山積みで、いざ漏水が発生すると、管理員に矢継ぎ早に質問される方も少なくはありません。

上階から漏水は、マンションならではのトラブルです。
今回の記事では
・漏水が発生した際の対処の手順
・漏水トラブルの損害賠償
・漏水トラブルに対応する損害保険

に関して、もしものときに慌てずに対処できるよう、現役管理員のりす丸がわかりやすく解説します。

目次

マンション漏水対応の4ステップ|原因調査から復旧まで

漏水対応の4ステップ

突然漏水が発生すると、どうしていいかわからずあせってしまいますね。
しかし、実は漏水が発生した際の原因調査から被害復旧までの手順は、ほぼ決まっています。

Step1:漏水原因の調査

漏水対応のファーストステップは、水がどこから漏れているのかを突き止める漏水原因調査です。
漏水原因調査の目的

  • 漏水元を特定する
  • 漏水が再発しないように修理をするメドをつける

この2つです。

漏水元が天井裏、床下どちらにしても、目視できる場所であれば特定はそれほど難しくありません。
しかし、漏水元は床や天井に一旦穴を開けなければ調査できないケースも少なくはありません。

りす丸が経験した強烈な原因調査は、バスタブ裏側の給湯管のピンホールでした。
この時は外側から全く確認ができなくて、結局作り付けのバスタブに穴を開けて漏水原因を発見しました。
この時は、幸い破壊したバスタブの交換まで調査保険で認められたので居住者の負担が発生しなかったのが救いでした。

Step2:漏水箇所の修理

水漏れを止めたら、次のステップが漏水箇所の修理です。
給水管、給湯管、排水管などのピンホールや亀裂ができている部分を交換して漏水が再発しないよう修理をします。

Step3:漏水箇所の修理被害住戸の復旧

調査と漏水元の修理の次のステップは被害住戸の復旧です。
具体的には、

  • 濡れをした壁材(ブラスターボード)の交換
  • 壁紙の貼り替え
  • 水濡れにより使用不能となった家財の交換

などが含まれます。

復旧の範囲は保険の査定人(アジャスター)が決める

漏水の被害範囲を査定しているアジャスターとりす丸のイラスト

水濡れ被害の復旧範囲は誰が決めるのか。
それは、最終的に決定するのは損害保険の査定人(アジャスター)です。
厳密にはアジャスターが決めるのは損害保険で補償できる範囲ですが、査定から外れた部分の補修には費用負担が発生します。

例えば、漏水で水濡れしたのがキッチンの壁の一部分であった場合に、壁紙の風合いが変わってしまうのでキッチン全体を交換したいと申請しても認められません。
もちろん、自己負担(加害者負担)でも復旧するということであれば問題はありませんが、
「保険で認められた範囲=相手が支払う義務のある範囲」
になることが多いと覚えておきましょう。

ただし、保険申請をしたら必ずアジャスターが登場するわけではありません。
一定以上の補償金額となった場合に、保険会社の判断でアジャスターが現場査定を行います。

りす丸

りす丸の経験では、補償費用100万円以上がアジャスター登場の目安のような気がしています。

Step4:漏水箇所の修理加害住戸の復旧

最後のステップが漏水元となった加害住戸内にも水濡れが発生していた場合には、その部分の復旧です。
ただし分譲マンションでは加害住戸の復旧は、居住者負担が原則です。

漏水発生時の「加害住戸」と「被害住戸」の関係

漏水の復旧に関して話し合っている住民とりす丸のイラスト

漏水対応ステップの説明で、

・漏水元:加害住戸
・漏水した住戸:被害住戸

として説明をしていますが、これは犯罪用語の「加害者」と「被害者」ではありません。
保険対応を行う場合には、誰が誰に補償をするのかを明確にする必要があります。
そのため、加害・被害という言葉をあえて使用しています。

漏水トラブルは発生するまで上階居住者も下階居住者も全く気付かないというケースがほとんどです。
あくまでも保険対応を整理するための用語として使用している言葉だと、りす丸は理解しています。

漏水原因が「共用部」か「専有部」かで責任所在は180度変わる

漏水トラブルを整理する際に重要なポイントが、責任の所在です。
漏水箇所が共用部専有部かで損害に対する補償のすすめ方が大きく変わってきます。

漏水元が共用部:管理組合負担で被害復旧を行う
漏水元が専有部:加害住戸負担で被害復旧を行う

もちろん、それぞれが契約をしている保険を使用して補償することになります。

「共用部」と「専有部」の分かれ目

共用部と専有部の分かれ目は、それぞれのマンションの管理規約で決められています。
ここでは、一般的な共用部と専有部の分岐点をご紹介します。

給水管は水道メーターが基準

給水管の共用部と専有部の分岐点

マンションの給水管は水道メーター(量水器)が分岐点です。
メーターより専有部寄りの給水管は住戸外であっても専有部になります。
※このあつかいはマンションによって違いがあります。

  • 水道メーターより先は逆止弁などの装置も含めて専有部とする
  • パイプスペース内の設備は水道メーターより内側でも共用部とする

お住まいのマンションの分かれ目は「管理規約」に記載されています。
また、管理会社のフロント営業に問い合わせるのも方法の1つです。きちんと管理しているフロント営業であれば即答できるはずです。

りす丸

迷ったら管理規約を確認!マンションライフの基本です。

排水管は竪管と横間の境目が基準

排水管の竪管と横管の所有責任を説明したイラスト

マンションの排水管の共用部と専有部の分かれ目は、

  • 共用部:複数住戸からの排水槽もしくは公共下水道に流すための配管
  • 専有部:住戸の排水を竪管まで流す床下に配置されている配管

共用部の排水管はマンションの上下を立てに流れるので「竪管(立て管)」、専有部の排水管は床下に横に配置されているので「横管」と呼びます。

竪管=共用部、横管=専有部はわかりやすいですね。
それでは、竪管と横管をつないでいる継手部分はどちらでしょうか。
国土交通省が発行している「標準管理規約」では共用部と記載されていますが、これもマンションの管理規約ごとにちがいがあります。

国土交通省「標準管理規約」別表第2 共用部分の範囲より抜粋

雑排水管及び汚水管については、配管継手及び立て管等専有部分に属さない「建物の附属物」
(引用:国土交通省「標準管理規約」

また、継手が共用部と規定されている場合でも、漏水の原因が異物の混入など居住者責任が明確な場合には賠償を求められるケースもあります。

配管が見えなくても専有部の責任になる

床下の配管の責任所在を居住者と話し合うりす丸のイラスト

給水管や排水管は床下や天井裏に設置されているので居住者は目にしたり、ましてやメンテナンスをすることは難しい設備です。
しかし、専有部と規定されている部分が水漏れをした場合には、その居住者の責任範囲となります。

「これはマンションの設備なので共用部では?」と、りす丸もよく質問をされます。
その際には、
「専有部扱いの配管を含めて分譲し、居住者の所有物となっているとお考え下さい。ご自宅が一戸建てであれば配管はご自身で修理しますよね。マンションも同じ考え方です。」
と回答をしています。

特にわかりづらいのは排水管からの漏水。床下に設置されている排水管のトラブルには居住者は気が付きません。

排水管からの漏水に関する対処法をこちらの記事でまとめました。

漏水トラブルをカバーする火災保険・個人賠償責任保険の仕組み

漏水トラブルが発生した場合には補償や復旧で大きなお金がかかります。
それをカバーするのが火災保険です。
マンションに入居する際に「火災保険」への加入が条件となっている物件が多くなっています。
しかし、現役管理員りす丸の実感では、具体的に火災保険の内容やどこまで補償されるかを理解されていない方が多いのも事実。
漏水時に適用される火災保険に関してわかりやすくまとめました。

火災保険と漏水発生時に必要な特約

火災保険とは建物や家財に起きた直接的な損害を補償する保険です。
しかし火災保険の本体だけの補償範囲では、漏水トラブルはカバーしきれないケースがほとんど。
漏水トラブル発生時には火災保険本体にトッピングのような位置づけの「特約」をプラスしておかなければなりません。
ここで再度、漏水トラブルにかかわる保険適用の原則を確認しておきましょう。

スクロールできます
補償内容は?誰の保険?どの特約?
原因調査管理組合原因調査費用特約
被害箇所の復旧加害住戸個人賠償責任特約
加害住戸内の復旧加害住戸水濡れ特約

マンション入居時に推奨されて加入する火災保険には、おそらく「個人賠償特約」までセットされているのではないでしょうか。
しかし加害住戸の被害を補償する「水濡れ特約」まではセットされていないのが一般的です。
もしも個人賠償特約も水濡れ特約もセットされていない場合には、漏水トラブルを解決する費用は、「すべて加害住戸が自腹で負担」となってしまいます。

りす丸

お手元の火災保険の内容を早速チェックしてみましょう!

漏水原因の配管の補修工事は原則保険対応外

漏水トラブルの復旧で見落としがちなのが、実際に水漏れを発生させた配管の補修工事です。

  • 配管に小さな穴(ピンホール)が空いて水漏れした
  • 横管の継手や配管本体に微細な亀裂ができて水漏れした

といった原因の場合には、配管を交換して補修します。
しかし実は、この配管の補修工事が火災保険の適用対象外の場合があり、保険会社によっても判断が違います。

りす丸

りす丸の経験では、クレジットカードに付帯している損害保険でカバーできた事例もありました。

実際いくらかかる?漏水トラブルの費用目安

りす丸の経験上、漏水トラブルの復旧費用は規模により大きく変わりますが、目安としては以下のような金額感です。

特に築20年以上のマンションでは、配管交換が絡むとさらに高額になる傾向があります。
100万円を超える事故は決して珍しくありません。
だからこそ、保険内容の確認が“今”必要なのです。

実際の費用は状況により異なります。あくまで一般的な目安として参考にしてください。

火災保険の備えを診断するのならこちら

管理組合の「個人賠償責任保険」が漏水補償のセーフティネット

漏水化会社に保険適用を伝えているりす丸のイラスト

マンション管理組合によっては、組合契約の火災保険に専有部の水濡れ被害に関する損害賠償をカバーできるように、「全住戸の個人賠償責任保険」に加入している場合があります。
もしも加入していれば、加害住戸の住民が個人賠償特約を契約していなかった場合などに、管理組合で被害住戸の補償がカバーできます。

実は管理組合の個人賠償保険への加入は義務はありません。
「全住戸の個人賠償責任保険」加入の有無は、管理組合に問い合わせればわかります。
その際には、
「このマンションの火災保険は施設賠償のみですか?それとも一括個人賠償まで加入していますか?」
と聞いてみましょう。

ただし管理組合が「全住戸の個人賠償責任保険」に加入していたとしても、それは最終的なセーフティネットです。

りす丸

「専有部間の漏水トラブルは住戸間で解決」が原則です。

まとめ:漏水保険の構造を知ることが“自分を守る”

火災保険の内容を確認している家族を見守るりす丸のイラスト

マンションで漏水トラブルは、発生する可能性が高いトラブルです。
ましてや、築年数が20年以上経過しているマンションでは要注意、「いつ漏水が発生してもおかしくない」という意識をもって備えることが重要です。

居住者自身が加入している「火災保険」や管理組合が加入している「火災保険」、それぞれの特約補償内容は普段からしっかりと確認しておきましょう。
漏水時の保険対応の構造を理解することが、もしもの時に自分を守る盾になります。

管理室で現役管理員りす丸に気軽に問い合わせをしてください。
いつでも、現役管理員のりす丸が管理組合の火災保険についてご説明します!

火災保険の見直しがもしもの時のささえになります

漏水発生時の保険対応に関するよくある質問

マンションで漏水が起きたら、まず誰に連絡すればよいですか?

まずは管理会社または管理員室へ連絡してください。
漏水は原因の特定と水を止めるまでの初動対応が最も重要です。
自己判断で上階へ直接交渉するのではなく、管理側を通すことで
・原因調査の記録が残る
・保険対応がスムーズになる
・上階住戸とのトラブルの拡大を防げる
などのメリットがあります。

上の階から水漏れした場合、修理費は上階の人が払うのですか?

原則として、漏水原因が専有部にある場合は加害住戸側が補償します。
ただし実際には、上階居住者の個人賠償責任保険、管理組合の火災保険、などを使って補償が行われるため、個人間で直接お金を支払うケースは多くありません。
まずは原因が「共用部か専有部か」を確認することが重要です。

管理組合の保険はどこまで補償してくれますか?

管理組合の火災保険は主に共用部の事故を対象としています。
一般的には管理組合の火災保険では、原因調査費用、共用配管からの漏水の補償、共用部分の復旧、がが対象です。
専有部同士のトラブルは、基本的に各住戸の保険で対応します。
ただし、管理組合が全住戸の個人賠償責任特約をセットしている場合には、専有部の補償を組合が担う場合もあります。
※マンションによって契約内容が異なるため、管理組合へ確認しましょう。

上階の人が保険に入っていなかった場合はどうなりますか?

火災保険に加入していなかった場合には、加害住戸の自己負担になる可能性があります。
ただしマンションによっては、管理組合の一括個人賠償責任保険が適用できる場合があります。
まずは管理会社・保険会社が調整を行うため、個人間で直接請求する前に相談しましょう。

漏水原因の調査費用は誰が支払いますか?

多くの場合、管理組合が加入している火災保険の「原因調査費用特約」 が使用されます。
ただし、原因が専有部と明確に判明した場合、居住者の使用方法に問題があった場合には、最終的に費用負担が変わることもあります。

漏水事故では必ず保険会社の査定(アジャスター)が来ますか?

必ずではありません。
一般的には、被害額が高額な場合や損害範囲の判断が難しい場合に現地査定が行われます。
小規模な水濡れでは、写真や見積書のみで保険判断されるケースが多いです。

漏水トラブルを防ぐために居住者ができることはありますか?

次の3つが重要です。
・火災保険の補償内容を事前に確認する(特に個人賠償責任特約)
・長期間不在時は給水バルブを閉める
・排水の流れが悪いと感じたら早めに管理へ相談する
「異変を放置しないこと」が最大の予防策です。
排水管のメンテナンスはこちらの記事をご覧ください。

目次