【管理員の漏水対応②】水が止まらない漏水トラブル|管理員ができる原因特定と応急措置

計測した漏水の調査をしながら住民と相談をしているりす丸のイラスト

管理員にとって、居住者からの電話で一番ドキッとする連絡、何かわかりますか?
それは「天井から漏水している!」です。
漏水はマンションでは避けてとおれないトラブル、長年管理員をつとめていると必ず遭遇します。

管理員として漏水対応で一番重要なのは、原因を完璧に突き止めて解決をすることではありません。
まずは「水を止めること」
これができるかどうかで、その後の展開は大きく変わります。

りす丸は現役のマンション管理員として、専有部での漏水対応を何度も経験してきました。
その中で実感しているのは、漏水対応は「スキル」以前に「初動」と「準備」で9割決まるということです。

今回の記事では、現役管理員の実体験をもとに、

  • が止まらない漏水トラブルの初期対応の考え方
  • 管理員のスキルレベル別にできる対応範囲
  • 実際にりす丸が管理室に常備している漏水対応ツールリスト

をまとめて解説します。
漏水対応が未経験の管理員にもわかりやすいように、現場で実際に役立つ「継続的な漏水への初期対応」を実務マニュアル的にまとめました。

目次

継続的な漏水とは?管理員が最初に知っておくべき前提

漏水の種類を説明しているりす丸のイラスト

マンションの漏水は、りす丸の経験から大きく3種類に分けられます。

漏水の状態想定される漏水の種類
一度だけ発生して継続しない漏水洗濯機の排水ホーズが外れた、キッチンシンクの水があふれたなど上階のトラブルの可能性が高い
水落ちが継続して続く漏水上階住戸での給水管や給湯管からの水漏れの可能性が高い
断続的に発生する漏水バスルームやキッチン、トイレなどを使用した時に排水管からの水漏れの可能性が高い

もちろん漏水はどのタイプも深刻なトラブルですが、特に水落ちが継続して止まらない場合には、漏水住戸の被害がどんどん広がってしまう可能性があり、できるだけ早急な応急措置が必要です。

この、継続的に漏水が発生し続けている場合に遭遇した時に管理員はどのような初期対応をすればよいのか。
りす丸の実体験からまとめました。

管理員の初期対応|最優先は、水を止めること

マンションキッチンからの漏水の応急措置をしているりす丸のイラスト

漏水の連絡を受けて管理会社には連絡をしているし、漏水対応の専門業者の手配もお願いしています。
しかし、いずれも現場到着まではかなりの時間がかかるものです。

現場に到着すると、
「どうすればいいの?」
「早く水を止めてほしい」
「上の階が悪いにきまっている」
などと、少しお怒り気味に言われることも少なくはありません。
居住者の一番の不安ポイントはポタポタ落ち続けている水が止まらないこと。水落ちが止まれば当面の不安は解消されるはずです。
逆に、いつまでも水が落ち続けていると、
「早く漏水を何とかして!」と、怒りの矛先が管理員に向けられてしまうことも…。

不安そうな居住者を前にして管理員としてやるべきこと。
それは、「漏水を止める努力をする」ことです。

漏水を止めるには、まずどこから水漏れをしているかを突き止めなければなりません。
これはそう簡単にはいきません。それなりの知識と経験が必要です。
しかし、だからと言って「管理員が何もしない」では、居住者の不安やイラ立ちはますばかりです。

そこで管理員としては、「漏水を止めよう、解決しよう」としている姿勢をしっかりと見せること。
「漏水を止める努力をする」ことが重要なのです。

りす丸

管理員が落ち着いてトラブルに向き合う姿勢が居住者の安心感につながります

管理員の対応は3ステップで考える

漏水対応の3ステップを解説したイラスト

管理員はもちろん、設備や配管などの専門技能があるわけではありません。
管理員ができる応急対応を3つの段階に分けて解説します。

第1段階:漏水現場(被害住戸)の初期確認
第2段階:漏水元の特定と応急措置
第3段階:上階住戸への確認

現役管理員としてりす丸がが実際に行っている「水が止まらない漏水時の応急措置」を、経験に基づいて整理しました。
管理員が無理をしない範囲でできる対応に絞っているので、現場でそのまま使えます。

第1ステップ|漏水状況を正確に記録する(新人管理員の合格ライン)

居住者から漏水の連絡があったら管理会社に連絡し、漏水現場に向かうことを報告します。
そして、被害住戸に到着したら状況の確認、この初期確認が今後の対応を大きく左右します。

①被害状況の確認と記録

漏水現場では、
・どこから水が住戸内に染み出ているのか
・実際に濡れている範囲

2点を確認し、写真で記録を残します。
この写真記録は、駆けつけた管理員でしか残せない場合が実は多いのです。
もしも漏水が止まってしまうと被害の特定ができなくなってしまうので、とても重要な管理員の初期対応です。

【残すべき現場写真】

漏水が起きている部屋の全景:被害範囲がわかる
水が染み出している箇所のアップ:水滴や水の流れがわかるとベター
水濡れした家具や家財:保険申請の際に必要

同時に居住者から漏水状況のヒアリングを行います。

【ヒアリングすべき内容

・いつ気づいたか
・漏水は広がっているか、おさまっているか
・被害を受けた家財道具はあるか

第2ステップ|応急措置と原因確認(中堅管理員レベル)

漏水経路は漏水箇所に一番近い天井の点検口から天井裏をのぞいて確認します。

天井裏の「スラブ」と呼ばれるコンクリートの壁や柱に水跡(みずあと)があれば、その上部に漏水元があるのがわかります。

もしも、漏水箇所のちかくに点検口がない場合には、バスルームの点検口から覗いてください。
バスルームの点検口は比較的広くて、天井裏全体が見渡せる場合が多いです。
この漏水元の確認作業を管理員用語で「水路(みずみち)を探る」と言います。

天井裏に水溜りができていました、この上に漏水元がありそうです

天井裏の漏水現場をりす丸が指差し確認をしている画像

もしも、漏水箇所の近くに点検口がない場合には、バスルームの点検口から覗いてください。
バスルームの点検口は比較的広くて、天井裏全体が見渡せる場合が多いです。

バスルームの点検口

漏水を調査するバスルームの点検口写真

点検口確認に必要なツール

点検口から天井裏を覗いて確認するために必要なツールはあらかじめ持参していきます。

①脚立

天井裏を覗くためには、脚立は必須。居住者宅で椅子を借りたりすると届かなかったり、倒して二次被害を起こす恐れがあります。

②ワークライト

できるだけ小型で最低500ルーメン以上の光量のライトが必要、据え置きできる「ワークライト」があれば確認や写真撮影がしやすくなります。

③デジタルカメラ

携帯電話でも撮影できますが、「落とす」、「濡らす」などのトラブルの可能性があるので、防水機能がある小型のデジカメがおすすめです。

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漏水拡大を防ぐ応急措置

漏水経路がわかれば、その濡れている箇所に給水シートを敷くだけで、漏水被害の拡大を防ぐことができます。
漏水対応専用の業務用給水シートもありますが、りす丸の経験では「ペット用トイレシート」が最強、濡れている部分に押し当てるだけでかなりの水を吸い取ってくれます。

漏水対応に役立つツールは「管理室で備えるべき漏水対策七つ道具」記事で詳しく解説しています。 あわせてお読みください。

どこから水が漏れているかを知るうえで、天井裏の確認はとても重要です。
ただし、それなりの知識と経験が必要。また、管理会社から2次被害をおそれて実施しないよう指導されるでしょう。
経験の浅い新人管理員さんにはここまでの作業はおすすめしません。

りす丸

漏水経路の確認は重要ですが、決して無理をしてはいけません

第3ステップ|上階住戸・水道メーターの確認(ベテラン管理員レベル)

漏水経路が上階からと確認したうえで、上階住戸を訪問し漏水の有無を確認します。
この時に、被害住戸の天井スラブが濡れている写真は、状況を説明するのに大いに役立ちます。

上階住戸でも、まずはじめに天井の点検口から上部を確認する必要があります。
そして、そこにもスラブに水跡があれば、漏水元はさらに上階の住戸であることがわかります。
水落の痕跡がなければ、その住戸が漏水元でほぼ確定です。

  • 天井に水跡が見られる → さらに上階の住戸が漏水元の可能性が高い
  • 天井に水跡がない → この住戸が漏水元にほぼ確定

水道メーターを確認する

水道メーターの節水コマを説明するりす丸の画像

給水管からの漏水かどうかを確認するために水道メーターを観察します。

住戸内の水道をすべて締めても節水コマが回っているようであれば給水管からの漏水がほぼ確定です。
漏水元の居住者に専門業者の対応が完了するまで、水道元栓を締めさせていただけるよう、協力をお願いします。

りす丸

ここまでたどりつければ、管理員の対応としてはほぼ満点。
駆けつけた専門業者も手際のよい措置に驚くかもしれません。

ここから先は専門業者の領域になる

漏水修理の専門業者に相談をしているりす丸のイラスト

漏水発生の一報から応急処置まで、一連の流れを手順にそって説明しました。
この事例は漏水元が特定できて、居住者の協力も得られた場合のケースです。
実際には、

  • 漏水発生もとが特定できない
  • 上階居住者が不在で連絡が取れない

など様々な問題が発生します。

管理員としては「順調に対処できないのがあたりまえ」と考えて対処するのが肝心。
そして、居住者に管理員ができることを全てやっていると理解してもらうことがとても大切です。

管理員の現在のスキルで可能なステップまで対応すれば、あとは専門業者の領域です。
現場でのスムーズな引き継ぎが最後の仕事になります。

管理員がやってはいけない対応とリスク

漏水元が確定したとしても、居住者の意識は「自分の部屋から漏水している」とは思ってもいません
壁裏の給水管が原因なので、やむを得ない状況です。
漏水の場合は補償の関連で、「被害住戸」「加害住戸」と呼びますが、漏水元の住民も決して加害者ではないのです。

漏水元の居住者に対しても状況の丁寧な説明でご理解をいただき、今後の対応にご協力をいただく事が何よりも大切です。

まとめ|管理員は「止める人」ではなく「整理する人」

漏水の状況を整理して住民とフロント営業に説明をしているりす丸のイラスト

ここまでの漏水対応は、りす丸が築30年オーバーの大型マンション管理員のころに何度も漏水トラブルに遭遇したなかで身につけた実践的ノウハウです。
マンション管理員として「ここまで対応すべき」という記事ではありません

管理員としては、第1段階の状況確認をしたうえで管理会社に報告し、上階住戸に専門業者の到着まで節水をお願いできれば合格です。

しかし、実際の現場では「すこしでもトラブルを解決したい」と、管理員として思ってしまいます。
今回の記事は、その際の参考としてお読みください。

継続した漏水の初期対応に関するQ&A

管理員はどこまで漏水対応をすれば責任を果たしたことになりますか?

管理員の役割は「原因を完全に特定すること」ではなく、「被害状況を整理し、適切に専門対応につなぐこと」です。写真記録、ヒアリング、応急措置、関係部署への報告ができていれば、実務上は十分に役割を果たしていると言えます。

上階住戸が不在で中に入れない場合、管理員にできることはありますか?

強制的に入室することは原則できません。その場合は、下階の被害状況の記録、管理会社への報告、掲示や連絡メモによる入室依頼など、「記録と連絡」に徹するのが現実的な対応です。

水道メーターの確認は管理員が行っても問題ないですか?

メーターの「確認」自体は問題ありませんが、「操作(止水)」は原則として居住者または管理会社の指示のもとで行うべきです。勝手な止水はクレームや責任問題に発展する可能性があります。

応急措置で水を受けたり拭いたりするのはどこまで許されますか?

バケツや給水シートで水を受けるなどの「被害拡大防止行為」は問題ありません。ただし、設備の修理や配管の加工などは管理員の業務範囲を超えます。

漏水原因が専有部か共用部か分からない場合、どう判断すべきですか?

管理員がその場で断定する必要はありません。「可能性の整理」と「状況記録」に留め、管理会社や専門業者に判断を委ねるのが現実的です。現場で断定してしまう方がトラブルの元になります。

写真や記録はどの程度残しておくべきですか?

被害箇所全体、天井や壁のアップ、水の状態、時間帯が分かる情報など、第三者が見ても状況を再現できるレベルで残すのが理想です。後日の説明やトラブル防止に非常に役立ちます。

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