マンション管理員にとって排水管の水漏れ対応は避けて通れない業務です。
特に築年数が古いマンションでは、設備の経年劣化に伴って増加する傾向があります。
特に“常に水が流れている”わけではない排水管からの漏水は原因特定が困難。
さらに、住民対応の難易度も高く、言葉選びひとつでトラブルに発展することもあります。
りす丸は現役管理員として排水管の漏水にも何度か遭遇しました。
しかし何度経験しても、排水管漏水はとても難しいと感じています。
この記事では、現役管理員としての経験をもとにした、排水管漏水の初期対応を「管理員目線」でわかりやすく解説します。
排水管の水漏れ対応|管理員が行う初期対応3ステップ

漏水が発生して現場に到着しても、その時点ではどこから発生した漏水かはわかりません。
水漏れの状況や被害住戸の居住者からのヒアリングから、漏水元が排水管であると想定します。
Step1 漏水原因が排水管かどうかを見極める
Step2 どの設備系統の排水管かを特定する
Step3 漏水元住戸への確認
排水管漏水では、管理員が自ら修理や応急処置を行うことはほぼ不可能。
管理員にできるのは、「原因を突きとめること」ではなく、「状況の確認と引継ぎ」です。

Step1 排水管が原因か?水漏れの見分け方

排水管が原因の漏水には、次のような特徴があります。
- 断続的に発生する
- 水量が多くない
- 生活時間帯に集中する
断続的に発生するのは上階住戸が排水設備に水を流したタイミングで水漏れが発生します。
排水管を流れる排水の一部が水漏れするので1回あたりの漏水量はそれほど多くはありません。
りす丸たとえば、夜20時ごろに下階から「天井からポタポタ音がする」と連絡が入り、上階がちょうどお風呂を使っていた場合などは排水管漏水を疑います。
Step2 どの排水設備から水漏れしているか特定する


漏水の特徴から排水管が原因と想定したら、すぐに上階に駆けつけるのではなく、まずは管理室に戻り図面で排水管の配置を確認します。
排水管漏水で参照する図面は「給排水衛生設備図面」、設備図面は必ず管理室内に保管されています。
住戸内の主な排水管は次の5種類。
- キッチン排水
- 洗面排水
- バス排水
- 洗濯機排水
- トイレ排水
上下階の平面図を見合わせて、この中で漏水発生場所に一番近い排水管から水落ちしているのではないかと見当がつきます。
ただし、築年数が古いマンションではリフォームで配管が変更されている場合も少なくありません。



図面をもとに実際の配置を確認してみると、わかりやすいです。
上の階への確認方法|排水管水漏れ時の対応
排水管漏水は上階住戸が気づいていないケースがほとんどです。
いきなり「お宅の排水管から水が漏れています。」と切り出してしまうと、居住者にしてみれば寝耳に水なので困惑されてしまうでしょう。
- 下階で漏水が発生していること
- 排水管が原因の可能性があること
- 多くの場合、居住者自身に過失はないこと
- 最近水回りでトラブルがなかったか
(水をこぼした、排水ホースが外れた など) - 排水管につながっている設備の使用状況
(バスルーム、トイレ、キッチン など)
設備の使用時間と下階で漏水が発生した時間が一致すれば、答え合わせができます。
排水管は床下に配置されているので専門業者でなければ点検することはできません。



ここまでのステップで、おおよその漏水元が特定できれば、管理員としての初期対応は合格です。
ヒアリングが管理員の腕の見せ所
排水管漏水対応において、上下階へのヒアリングは避けて通れません。
この工程は、漏水対応の中でも管理員の経験値が最も試される場面です。
言い回しを誤ると、
- 上階住戸から「こちらの責任だと言われた」と受け取られる
- 下階住戸から「原因を断定された」、「管理員が何もしない」と誤解される
- 「上階居住者の謝罪がない」と下階居住者が怒りはじめる
- 結果的に管理員が当事者間トラブルに巻き込まれる
排水管漏水が初めての新人管理員であれば無理に踏み込まず、最低限の状況確認にとどめて、専門業者へ引き継ぐことをおすすめします。
排水管水漏れ対応でよくある管理員の失敗例


りす丸は以前、排水管漏水の対応で大失敗をした経験があります。
上階の排水管からの漏水とほぼわかったので、被害住戸の居住者に
「上階の排水管が原因と思われます」と説明したところ、
「それなら、すぐに上階の人を呼んで謝らせろ!」
と激怒され、状況の収拾が一気に難しくなったことがあります。
理由は明確です。
排水管からの水漏れではキッチンやバスルーム、あるいはトイレなどから汚れた水が漏れ出してきます。
排水=汚水のイメージで不安が爆発、”排水管から”と聞いて、つい怒ってしまうのも無理はありません。
この一言で、
下階 →「じゃあ上の階に謝らせろ」
上階 →「こっちの責任だと言われた」
という当事者間トラブルが一気に発火します。
排水管漏水では、“原因の推定”と“責任の断定”はまったく別物です。
管理員ができるのはあくまで、
「漏水の原因は専門業者の調査が必要」
「調査が完了するまで節水の協力をお願いしました」
と事実ベースで状況を説明することだけです。
排水管の水漏れで管理員ができる現実的な対応


排水管漏水で管理員ができる対応は限られています。
管理員が行う漏水の調査は、「たぶん、ここから水漏れしているのではないか」という推定です。
外部からは見えない場所なので断定はできません。
そして管理員ができる現実益な対応は、
- 上下階住戸への説明と節水のお願い
- 専門業者への引き継ぎ準備
このふたつに限られます。
上下階住戸への説明と節水のお願い
漏水元住戸には
「あくまでも管理員の推定ですが、排水管から水漏れしているようなので専門業者到着まで設備使用を控えてほしい」
とお願いすること。
被害住戸には
「上階からの漏水のようですが、詳しい原因は専門業者の調査が必要です。それまでの間、節水をお願いしてきました。」
と管理員ができる範囲の対応をしたことを冷静につたえること。
ここまでが現実的な対応です。
ただし、ここまでの対応手順も管理会社から支給される「管理員マニュアル」には載っていません。
あくまでも、りす丸がこれまでの経験をもとにまとめた手順です。



排水管漏水は対応がとても難しいので、踏み込み過ぎると地雷を踏む恐れあり!
慎重な対応をこころがけましょう。
専門業者への引き継ぎ準備
やがて駆けつける漏水対応の専門業者に状況をまとめて引継ぎをします。
この引継ぎのために管理員の初期対応をがあると言えます。
スムーズな伝達が、その後の対応のスピードアップにつながります。
- 漏水発生の時系列まとめ
- 現場写真
- 上下階の設備図面
- それぞれの住戸からの聞き取り内容の箇条書きまとめ
ここまで準備をすれば、あとはお任せ。
管理員は排水管漏水に対して的確な対応をしたと評価されます。


なぜ管理員はここまで調査する必要があるのか


管理員の漏水対応は、ほとんどのマニュアルでは管理会社への報告と専門業者の手配までになっています。
ヒアリングや調査などはむしろ管理員の守備範囲を超えているかもしれません。
りす丸が新人管理員だった頃に排水管からの漏水があり、専門業者に来てもらいました。
しかし、到着した時には水漏れが止まっていたので、「再発しないと調査できません、また水漏れがあったら連絡してください」と言われたことがあります。
そして、数日後にふたたび漏水発生!漏水被害は広がってしまいました。
この時の居住者の怒りの矛先は、残念ながら管理員に向いてしまいます。
この時の苦い経験から、的確な対応をしていただけるように管理員のできることを全部やろうと考えるようになりました。



原因不明のまま漏水の再発を待つ居住者の不安な気持ちはよくわかります。


マンションの排水管水漏れ、誰の責任になる?
排水管からの水漏れが発生した場合、居住者からほぼ必ず聞かれるのがこの質問です。
「これって誰の責任なんですか?」
「上の階の人が弁償するんですか?」
「管理組合ですか?管理会社ですか?」
しかし、排水管漏水の責任問題は管理員がその場で即答できるものではありません。
なぜなら、責任の所在は次の3点によって変わるからです。
- 排水管が「専有部分」か「共用部分」か
- 漏水原因が「設備の経年劣化」か「使い方の問題」か
- 管理規約でどこまでを管理組合が負担するか決められている
これらはすべて、専門業者の調査結果と管理規約を見なければ判断できません。
結論:責任問題は「管理員の仕事ではない」
排水管漏水において、
- 誰が悪いのか
- 誰が修理費を払うのか
- 誰の保険を使うのか
これらはすべて、管理組合・管理会社・専門業者が判断する領域です。
管理員の役割は、責任の所在を決めることではなく、事実を整理して、正しく引き継ぐこと。
ここを勘違いすると、排水管漏水は一瞬で「住民トラブル案件」に変わります。


まとめ:排水管の水漏れは管理員だけでは解決できない


排水管からの漏水は、正直に言って管理員の手に負えないトラブルです。
漏水が発生して「これは排水管が原因かも」と気づいたら、状況をまとめた的確な引継ぎをすること以外にできることはあまりありません。
むしろ、無理な対応や居住者へのあいまいな説明で発生する2次被害を防ぐことが重要です。
そして、排水管漏水は未然に防ぐことが最善策です。
排水管漏水を防ぐための注意点や排水口の流れが悪くなった時の初期対応など、居住者ができる排水管対策を管理員の視点からまとめました。
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排水管漏水の初期対応に関するよくある質問
- 排水管の水漏れかどうか、素人でも見分ける方法はありますか?
-
あります。
断続的に漏れる/水量が少ない/生活時間帯に集中する、といった特徴があれば排水管漏水の可能性が高いです。
ただし、給水・給湯管との正確な判別は専門業者でなければ不可能です。 - 上の階が水を使っていないと言っている場合でも、排水管が原因の可能性はありますか?
-
あります。
洗濯機・浴室・キッチンなど、居住者が意識していない排水でも漏水するケースは珍しくありません。
そのため管理員は「断定せず、使用状況をヒアリングする」ことが重要です。 - 排水管漏水が起きたら、管理員はその場で修理してもいいのですか?
-
原則できません。
排水管は床下・天井内にあるため、管理員による応急修理は現実的ではなく、二次被害のリスクも高いです。
管理員の役割は「状況整理と専門業者への引き継ぎ」です。 - 排水管漏水の責任は、上の階の住民になりますか?
-
その場では判断できません。
責任の所在は以下によって変わります。
排水管が専有部分か共用部分か、経年劣化か使用方法か、管理規約の定め、これらは専門業者の調査結果と管理規約を確認しないと決まりません。 - 「上の階の人に謝ってほしい」と言われたら、どう対応すべきですか?
-
管理員が仲介して謝罪を求めるのは避けるべきです。
排水管漏水は「原因未確定」の段階で責任を断定できないため、
「現在は調査中で、専門業者の確認が必要です」と事実ベースで説明するのが安全です。 - 漏水が止まってしまった場合、もう調査できないのですか?
-
ケースによります。
一時的に止まっていても、内視鏡調査や散水調査で原因を特定できる場合もあります。
ただし「再発時でないと調査できない」と言われるケースも多く、
そのため管理員による事前ヒアリングと記録が重要になります。 - 排水管漏水が再発した場合、管理員の責任になりますか?
-
原則なりません。
排水管漏水は構造・設備トラブルであり、管理員個人が責任を負うものではありません。
ただし、初期対応が不十分だと「対応のまずさ」でクレームになる可能性はあります。 - 排水管漏水で住戸内の家財が濡れた場合、保険は使えますか?
-
使える可能性はあります。
ただし、加害側の個人賠償責任保険、被害側の火災保険(漏水補償特約)、管理組合の施設賠償責任保険など、どの保険が適用されるかは原因と責任の所在次第です。






