こんにちは、現役マンション管理員のりす丸です。
現在住んでいるマンションの「避難経路」 をきちんと確認したことはありますか?
火災や地震が発生したらエレベーターは自動的に停止します。
そのときに唯一頼りになるのが 避難階段やバルコニーを使った避難ルートです。
実は、マンションでは建物内に複数の避難手段を確保する 「2方向避難」 が法律で求められています。
しかし実際には、
「そもそもどこに階段があるのか知らなかった」
「避難ハッチを見たことがない」
というケースがとても多いのです。
今回記事では、マンションの避難経路の基本から2方向避難の仕組み、管理員が見てきた「危険な実例」、そして入居後に必ず確認すべきチェックポイントまで、現役管理員の視点で分かりやすく解説します。

マンションの避難経路は3種類|避難階段・避難ハッチ・避難器具

マンションで設置されている避難経路は、おもに次の3種類です。
1.避難階段(共用階段)

もっとも一般的な避難ルートです。
火災時にはエレベーターが停止するので避難階段が脱出ルートの基本になります。
だけど、りす丸の経験では「普段使わない階段がどこにあるか知らない」という住民
が意外と多いです。
そして扉に「避難階段」の表示がないマンションや施錠されているマンションもあります。しかし、これは言語道断です。
避難階段は、いつでもスムーズにマンションの内側から外側に脱出できなければなりません。

マンションの避難階段は必ず一度は使ってみましょう。
2.バルコニー連結通路(避難ハッチ)


住戸のバルコニーの床に「避難経路」と書いてある、持ち上げて開く扉はありませんか?
その扉がバルコニーから下階に避難するための避難ハッチです。
ハッチを開くとハシゴが伸びて下階のバルコニーに降りられる仕組みになっていて、ハッチを利用すれば上の階からでもマンション外に脱出可能です。
また、バルコニーには隣戸との間に「隔て板」が設けられており、緊急時には破って隣へ避難できる構造になっています。



ハッチの周囲にモノを置いたりしては、避難の妨げになってしまいます。
3.避難器具
避難はしごや避難器具が設置されているマンションもあります。
特に昭和から平成にかけての古いマンションでは、「救助ふくろ」や「緩降機(ロープ式の避難器具)」が設置されている場合があります。



りす丸は、学校の避難訓練で救助袋を体験しました!
マンション防災の大原則「2方向避難」とは?
マンションの避難経路の大原則「2方向避難」という言葉を聞いたことがありますか?
2方向避難とは、火災などの時に避難する経路を2種類以上確保しておくという意味になります。災害時はエレベーターは停止してしまうので、エレベーター以外で2つの経路が必要です。
たとえば「南側の廊下方向が火災で使えない」場合でも、北側に「避難ハッチ」があれば逃げられますね。
この2方向避難は、 建築基準法・消防法の両方で義務付けられているマンションの重要な安全基準です。
2方向避難の根拠は「建築基準法」と「消防法」
2方向避難の原則は、マンション住民の安全を守るために「建築基準法」と「消防法」の二つの法律で定められています。
建築基準法の2方向避難
建築基準法には「2方向避難」という言葉自体は記載されていません。
しかし、建築基準法施行令第121条において、一定規模以上の建築物には「二以上の直通階段」を設けることが義務付けられています。
・避難階以外の階から地上に通ずる二以上の直通階段を設置しなければならない。
・直通階段に至る歩行経路に「共通の重複区間」がある場合、その長さは歩行距離の限度の1/2を 超えてはならない。
・居室から直接バルコニー等を経由して避難できる場合は、二方向避難の要件を満たすとみなされる。
(参考:e-Gov法令検索|建築基準法施行令)



建築基準法は、設計段階や建物の構造を規定する法律です
消防法の2方向避難
消防法は建物使用開始後の「維持管理」に重点をおいた法律です。避難経路や避難器具が常に有効に機能するように配慮すべき点が規定されています。
・ 避難経路が煙で塞がれた場合でも選択肢を確保すること
・排煙設備・防火区画などと合わせて、避難上の安全を確保すること
・ 避難器具(避難はしご・救助袋など)の設置・維持管理を義務付け、実際に使える状態を保つこと
(参考:e-Gov法令検索|消防法)



消防法はマンションの日常の管理を重視、りす丸もしっかり勉強しています!
これは危険!管理員が体験した「2方向避難が使えない瞬間」


管理員の巡回では、避難経路のチェックは重要なポイントです。
実際に避難経路が使えなくて、「これは危険!」と感じることも少なくはありません。
・バルコニーの避難ハッチの真下に大きな物置
・隣戸との隔て板の前にプランターがぎっしり
・外階段に自転車が置かれて通れない
・防火扉がドアストッパーで固定され、煙の逆流が起きる危険な状態
・非常階段が施錠されている
管理員はこれらの状況を見つけると、「障害物の移動」や「警告の貼り紙」などを行います。そして、危険な状況を写真にとって管理組合に報告、改善提案も大事な仕事なのです。


入居したら必ず確認!避難経路のチェックポイント


住んでいる方にもこれから購入する方にも、皆様の安全のためにりす丸からのアドバイスです。
入居したら必ず、次のポイントを確認してください。
避難階段までの距離を実際に歩く
図面では分かりません。 必ず“歩いて”確認しましょう。
夜と昼で見え方も変わるので、できれば2回確認することをおすすめします。
もう一つの避難ルートを探す
2方向避難の“第2ルート”がどこにあるか、これは現地でしか分かりません。別の階段はどこか目で見て確認することが大切です。
廊下や階段の幅が十分か
建築基準法施行令第119条では、避難に必要な幅が規定されています。狭すぎると避難時に混乱を招きます。
誘導灯や非常照明が点灯するか
夜間や停電時に避難する可能性もあるため、照明設備の確認は欠かせません。
非常階段の扉が施錠されていないか
古いマンションほど、キュリティ強化の目的で非常階段が施錠されていて使えないという矛盾が起きています。



入居前にチェックをしておかないと、住み始めてから後悔するかも…
これからマンションを購入する人へ
物件を選ぶとき、「価格・立地・日当たり」がよく比較されますが、避難設計を比較する人は多くありません。
しかし、例えば…
・ワンフロアに住戸数が少ない物件
・古いマンションで階段が1つしかない物件
などは2方向避難が確保しにくい傾向があります。また、新築でも、デザイン優先で避難動線が見づらい物件が増えています。
マンションの内覧をする際には、必ず2方向の避難ルートを歩いて確認することを強くおすすめします。
特に、高齢の家族がいる場合、小さなお子さんがいる場合、避難ルートの選択肢が多いほど安全性が高まります。
まとめ:避難経路は知っておくことが重要
マンションは頑丈ですが、「逃げられる構造かどうか」はまた別の話です。
避難階段までのルート、もう一つの避難ルート、バルコニー側の導線など、 これらをちゃんと理解しておくだけで、非常時の行動は大きく変わります。
りす丸も管理員として、日々点検をしながら、「このマンションは本当に避難できる状態か?」 を常に確認しています。
ぜひみなさんも、「2方向避難の確認」を習慣にして大切な家族の安全につなげてくださいね。



この記事を読んだら、今日中に避難階段を歩いてみましょう

