区分所有法とはマンションにおける権利関係や管理・運営のルールを定めた法律です。マンションごとに制定している「管理規約」などは、この区分所有法に則って作られています。
ある時、りす丸は管理会社の営業担当から、「2026年からは区分所有法が改正になるから総会が少し楽になるよ」と言われました。
区分所有法の改正にはそれほど注目していなかったのですが、その一言に何となく興味を感じて調べてみることにしました。
そして理解したのは、今回の区分所有法では現役管理員の仕事が楽になる可能性があります。
しかし、きちんと理解しないと、現場の実務にも影響が出るかもしれないということでした。
そこで、今回の記事では、
- 2026年区分所有法改正で何が変わるのか
- 改正によって管理員の実務にどのような影響があるのか
を、特に管理員の実務に影響がありそうな部分をできるだけわかりやすく解説します。
区分所有法改正とは?2026年の主な変更点

法務省ホームページ「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について」資料を参考に、今回の区分所有法改正の要点をまとめました。
今回の変更は「管理の円滑化」と「再生の円滑化」を目的にしています。
また、国土交通省ホームページでも詳しく掲載されています。
管理の円滑化
- 1)適正な管理を促す仕組みの充実【マンション管理法】
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新築時から適切な管理や修繕が行われるよう、分譲事業者が管理計画を作成し、管理組
合に引き継ぐ仕組み(分譲事業者と管理組合で共同変更)を導入
- 2)集会の決議の円滑化 【区分所有法】
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・ 区分所有権の処分を伴わない事項(修繕等)の決議は、集会出席者の多数決による (現行:全 区分所有者の多数決 ※普通決議::1/2以上、特別決議:3/4以上)
・裁判所が認定した所在不明者を全ての決議の母数から除外する制度を創設 - 3)マンション等に特化した財産管理制度 【区分所有法・マンション管理法】
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管理不全の専有部分・共用部分等を裁判所が選任する管理人に管理させる制度を創設
再生の円滑化
- 1)新たな再生手法の創設等 【区分所有法・マンション再生法等】
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建物・敷地の一括売却、一棟リノベーション、建物の取壊し等を、建替えと同様に、多 数決決議(4/5)により可能とする
- 2)多様なニーズに対応した建替え等の推進【マンション再生法】
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危険なマンションへの勧 告等 隣接地や底地の所有権等について、建替え等の後のマン ションの区分所有権に変換することを可能にする
このなかで管理員の業務に直結する事項は、②集会の決議の円滑化 【区分所有法】の項目です。
今回の記事では、このポイントを管理員の目線で深堀していきましょう。
2026年区分所有法改正のポイント【管理員目線】
今回の区分所有法改正のなかで、管理員の業務に直結する事項は②集会の決議の円滑化 【区分所有法】です。
管理員の仕事として、総会を開催する際の出席確認と議決権の集計が任されます。
これは本当に骨が折れる作業、管理規約の改正などで特別決議となった場合には、3/4以上の賛成を確保しなければなりません。
今回の区分所有法改正で、管理員の実務は軽減されるのでしょうか?
りす丸総会の運営は、本当はフロントの仕事、しかし当然のように総会成立の出席表集めを指示してくるフロント営業がほとんど
区分所有法改正で総会運営は楽になる?


総会では普通決議では総議決権数の1/2、特別決議では3/4の賛成が必要です。
そして、1/2以上の出席がなければ総会は成立しません。
今回の区分所有法の改正では次のように変わります。
- 普通決議:総議決権数の1/2 → 出席者の1/2
- 特別決議:総議決権数の3/4→ 出席者の3/4
決議が出席者ベースに改正されるので、特別決議がある場合でも出席者は総議決権数は1/2以上でOKになりました。
この、3/4の出席者を確保するのが何よりも大変だったので、確かに管理員の総会出席確認の仕事は少し楽になりそうな改正です。
【結論】
- 普通決議のみの総会:かわらない
- 特別決議のある総会:少し楽になる


今回の改正の核心:『所在不明者の除外』とは何か?
今回の区分所有法改正では特別決議の成立要件が緩和されるとともに、所在不明者の除外に対する明確な規定も盛り込まれました。
総会成立に苦労している管理員の現状


特別決議の議決が少し楽になるのは間違いありませんが、そもそも、「総会成立のための1/2の出席を確保するのが難しい」というマンションも少なくはありません。
「郵送物が届かない」、「連絡をしても電話がつながらない」といった、総会の案内すらできない区分所有者が、どのマンションでも何割かいらっしゃるのではないでしょうか。
- 分譲賃貸入居者が多い→オーナーが外部居住で総会に関心がない
- 築年数が古い→権利移転やオーナーの転居先不明で所在が分からない
管理会社では、管理費・修繕積立金が滞りなく入金されていれば、「区分所有者名簿」にはそれほど関心がありません。
しかし、たとえば50戸のマンションで5戸のオーナーが所在不明の場合は、残り45戸の中から過半数の26戸を集票しなければなりません。実質的に58%の出席票を集めるということになります。



この部分の管理員の苦労に気づいていない管理会社フロントは意外に多いんです


所在不明の区分所有者とは?分母除外の条件と注意点


今回の区分所有法改正では、「所在不明の区分所有者を分母から除外する」救済措置が盛り込まれました。
総会成立に苦しんでいるマンションでは、ぜひ活用したい改正点です。
しかし、ここにもハードルがあります。
「所在不明の区分所有者を分母から除外する」ためには、裁判所の認定が必要になります。
ただし「電話がつながらい」、「郵便が戻ってきた」程度では裁判所には認定してもらえません。
国土交通省発行の「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法」概要資料には以下のように記載されています。
所在等不明区分所有者:必要な調査を尽くしても氏名等や所在が不明な区分所有者
(例)・住民票など通常アクセスし得る公簿上の住所等を調査しても所在が明らかでない場合・区分所有者が死亡しているが、調査をしてもその相続人の存否が不明である場合等
(引用:国土交通省住宅局「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法」資料)
認定されるためには、所在不明であることを客観的事実で証明しなければならないのです。
もっとも毎年通常通り総会が開催できているマンションでは、所在不明者の除外はそれほど気にすることはありません。
築年数が古いマンションの建て替えや、大幅な修繕などの重要な議決をする際には強い味方になります。
区分所有法改正を活かすための管理員がするべき準備


2026年の区分所有法改正では、管理員の実務に役立つ改正ポイントがいくつかあります。
ただし、そのメリットを活かすためには管理員としての事前準備が必要です。
過去の総会出席率・議決権状況の把握
総会の議決権の要件緩和を活用するために、過去の総会の議決権の集計状況をふりかえる必要があります。
これまでの出席状況は何%くらいだったのか、本当に「所在不明者の除外」を検討する必要があるのか。
など、次回の総会開催に向けて理事会からの質問がおそらくあるのではないでしょうか。
実務上、この質問に回答できるのはフロント担当ではなく、現場の管理員です。
区分所有者名簿の整理と最新化の重要性
管理室に保管している「区分所有者名簿」はきちんと整理されているでしょうか?
りす丸が現在のマンションに着任した時は、正直ひどい状況でした。
区分所有者名簿のファイルはありましたが、単にまとめてあるだけで、全戸分そろっているのか、改廃されているのかもわからない状態です。
苦心してまとめなおしたら、
- 十数戸の名簿がない
- 転居した区分所有者の名簿もそのままファイルしてあるのでどれが最新かわからない
という状況、きちんと整備するのに1年近く苦労しました。
今回の区分所有法改正では、この「区分所有者名簿の整備」がとても重要なポイントになります。


理事会と管理会社を動かすための説明ポイント


総会の成立のために毎回苦心している管理員にとっては、所在不明者の除外はとてもありがたい救済措置です。
しかし、忙しい管理会社フロントが積極的に、「分母除外」のために動いてくれるでしょうか?
そこで、りす丸からの提案です。
ここは外圧を利用して管理会社フロントを動かしましょう。
所在不明者を除外できる改正を理事長に説明をして、管理会社に働きかけていただくという方法です。
理事長は、いつも総会成立にはやきもきしています。
この救済措置はぜひ活用したいに違いありません。
「出席票集めがたいへんです」という愚痴を言うのではなく、「今回の改正で、メリットのある救済措置が制定されました」とポジティブにお話すれば、「ぜひ活用しましょう」と言ってくださるのは間違いありません。



理事長からフロント担当に要請していただく。
管理会社を動かすには、これが一番です。


まとめ:今回の区分所有法改正は管理員にもメリットがある


今回の記事では2026年4月1日施行の区分所有法改正のなかでも、管理員の実務に影響がありそうなポイントにフォーカスをして解説しました。
区分所有者名簿の管理や総会の運営などは、本来であれば管理会社のフロント営業の仕事です。
しかし、りす丸の経験では管理員に実務をまかせてしまっているマンションが多いのが実情です。
今回の区分所有法改正は、特に総会の成立に苦労している管理員にとっては、うまく活用すれば、実務上も、そして管理組合にもメリットがある改正です。
そのメリットを活かすためにも、まずは管理員が起点となって理事会や管理会社を動かしましょう。
マンション管理員は普段清掃や小修繕などの実務が主要業務ですが、実はこのようにマンション管理に関わる法律などにも深くかかわっている仕事です。
- 管理全般:区分所有法
- 消防設備関係:消防法
- 電気設備関係:電気事業法
- 設備や建物:建築基準法
など、マンション管理員実務に密接した法律などに関しても、今後りす丸ができるだけわかりやすく解説していきます。
もしも、わからないことなどがあれば、いつでもりす丸に質問してください。
今回の記事は現役管理員のりす丸が区分所有法改正に関して調べて作成しました。本文内には誤りがあるかもしれません。法的なアドバイスについては、専門家にご相談ください。
2026年区分所有法改正に関するQ&A
- 区分所有法改正で、管理員の総会業務はどこが一番変わりますか?
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特別決議が「総議決権数の3/4以上 → 出席者の3/4以上」に変わるため、未提出者の影響が小さくなる点が大きな変化です。
出席確認や督促の負担が軽くなる可能性があります。 - 改正を活かすために、管理員が今すぐやるべきことは何ですか?
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過去の総会出席率の把握、区分所有者名簿の整理、 所在不明の可能性がある区分所有者の洗い出し、これらを準備しておくことで、理事会からの質問にもスムーズに対応できます。
- 理事長として、2026年改正で特に注意すべきポイントは?
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「所在不明者の分母除外」は理事会判断が必要になるため、名簿の現状把握と管理会社への指示が重要です。
総会成立の安定化につながるため、早めに議題化することをおすすめします。 - 所在不明者の除外を進める場合、理事長は何をすべきですか?
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管理員から情報を集め、理事会で調査方針を決めることが第一歩です。
裁判所への申立ては管理会社がサポートできますが、最終判断は理事会が行います。 - 区分所有法改正で、一般の区分所有者にどんな影響がありますか?
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総会が成立しやすくなるため、修繕や管理に関する意思決定がスムーズになる可能性があります。
大規模修繕や設備更新が遅れるリスクが減る点は居住者にもメリットです。




