【現役管理員が解説】マンション理事長の役割と見えない苦労を軽減する３つの処方箋

こんにちは、現役マンション管理員のりす丸です。
私は日々、管理組合の理事長さんと直接やり取りしながら、現場の管理業務を行っています。
突然ですが、「自分のマンションの理事長が誰か、知っていますか？」
理事長は管理組合の代表であり、いわばマンションの“顔”ともいえる存在です。
しかしその裏では、多くの責任と精神的な負担を背負っています。

この記事では、マンション理事長の具体的な役割や実際に多いトラブル・失敗例を踏まえて、現役管理員目線でわかる負担を減らす方法を、わかりやすく解説します。

• これから理事長になる方
• 現在理事長としてがんばっている方
• 理事長を支える住民の方

全ての方にぜひ読んでいただきたい内容です。

マンション理事長の役割とは？その立ち位置と役割

理事長の苦労をお話しする前に、そもそも理事長がマンションのなかでどのような役割を担っているのかを整理します。

管理組合の「顔」であり代表者

マンションには必ず区分所有者全員が会員となっている管理組合があります。
理事長は管理組合の代表者で組織する理事会のリーダー、つまり、マンションの代表であり「顔」ともいえる立ち位置です。
国土交通省が公開している「標準管理規約」では理事長は管理組合を統括し代表すると定義されています。

【標準管理規約】
第３８条 理事長は、管理組合を代表し、その業務を統括するほか、次の各 号に掲げる業務を遂行する。 一 規約、使用細則等又は総会若しくは理事会の決議により、理事長の職 務として定められた事項 二 理事会の承認を得て、職員を採用し、又は解雇すること。 ２ 理事長は、区分所有法に定める管理者とする。 ３ 理事長は、通常総会において、組合員に対し、前会計年度における管理 組合の業務の執行に関する報告をしなければならない。 ４ 理事長は、理事会の承認を受けて、他の理事に、その職務の一部を委任 することができる。
（引用：国土交通省HP|令和７年改正マンション標準管理規約)

国土交通省が公開している「標準管理規約」に関して詳しく知りたい方は、こちらの記事を合わせて読んでください。

総会や理事会の議長

理事長は、総会や理事会の議長を務めます。
理事会で話し合われた議題について、最終的な調整役となり議長をつとめて議案の取りまとめと決議を行います。

３．マンション管理運営の責任者

総会や理事会で決めた事項や、マンションの維持管理に必要な業務が滞りなく実行されているかをチェックし、業務遂行の責任をになうのも理事長の務めです。そして、管理会社やりす丸のような管理員は理事長からの指示や要望にそって仕事をしています。

つまり、理事長はマンションの資産価値を守り、住民の快適な共同生活を維持するための舵取り役なのです。この重い責任があるからこそ、多くの苦労が生まれます。
しかも、理事長は管理組合の代表者ですが、みなさんと同じ居住者でもあり、理事長業務はあくまでもボランティアなのです。

管理員は知っている！マンション理事長のよくある苦労３選

りす丸は都内の大規模マンションで常駐管理員として働いていますが、理事長の苦労を日々目の当たりにしています。以下は、現場でよく見かける「理事長あるある」です。

やることが多すぎる

理事長は、理事会の準備から住民対応、契約書の確認まで、実務が非常に多いです。管理会社がサポートするとはいえ、最終的な判断や署名は理事長が責任を負います。
現役で仕事をしている方が理事長になると夜間や休日に理事会業務をこなさなければならず、時間的負担はかなりのものです。

板挟みのジレンマ

住民からの要望や意見はすべて理事長に報告されて、そのうえで判断が求められます。
住民からは「もっとこうしてほしい」と要望されますが、理事会の席ではなかなか結論が出ないことも。理事長はその間で調整役となり、時には孤独な判断を迫られます。

頑張るほど批判される

理事長が積極的に動くと「勝手に決めた」「独断専行だ」と言われることがあります。逆に慎重すぎると「何もしてくれない」と不満が出る。どちらにしても批判されがちで、精神的なプレッシャーは大きいです。

管理員は知っている！理事長が陥る３つの落とし穴

理事長の苦労を理解する一方で、「これはちょっと…」というケースもあります。りす丸が現役管理員として「こんな理事長はイヤだ」と思った、実際に体験した困った理事長の例です。

【落とし穴1】独断専行

なかには理事会を通さずに修繕工事を発注したり、住民に説明なく契約を進めてしまう理事長も。りす丸の感覚では、もともと会社の重役をやっていた方とか、先生と呼ばれる職業の方に多いようです。
独断先行は必ず理事会でもめごとになるのです。

【落とし穴2】先送り・放置

何事につけても積極的に取り組まない、管理会社の提案にも「検討します」で、そのまま放置。結果として、必要な修繕が遅れたり、住民からの苦情が増えたりします。
現役サラリーマンが理事長になってしまうと、どうしても時間が取れずにすべてが後回しになってしまうことも。けれども、「仕方がないですね」とも言えません。

【落とし穴3】丸投げ依存

理事会業務のほとんどを管理会社に丸投げしてしまう理事長もやっかいです。りす丸のような管理員も管理会社から派遣されているのですが、実は理事会の決定と指示がなければ何もできません。

りす丸が提言！理事長の負担を減らす３つの処方箋

理事長が抱える苦労を日々目の当たりにしている私、管理員のりす丸から、心身の負担を少しでも軽くするための具体的なアドバイス、いわゆる「処方箋」を提言します。

【処方箋1】理事会メンバーへの「権限委譲」

理事長は、何もかも自分でやる必要はありません。理事会に大切なものはチームプレーです。自分にすべての業務が集中するのを避けるため、「任せる勇気」を持ちましょう。
たとえば、駐車場の改善を考える「駐車場担当理事」や住民の意識向上を考える「マナーアップ担当理事」など、会計や書記以外にも役割分担を進めれば、理事長の負担が軽くなります。

【処方箋2】「決裁のルール」を明確化する

マンション管理組合ではすべての事項を理事会もしくは総会の決議で決めなければなりません。
しかし、理事会を通過させないと何も進まない状態は、時間ばかりかかって理事長の負担は増えるばかりです。
「ここまでは理事長に任せます」といった、理事長一任のルールを決めておくことで、スピードと負担が劇的に改善します。

【処方箋3】管理会社に「頼る」と「任せる」を区別する

「管理会社任せで丸投げ」は危険ですが、管理会社に頼らずに全てを自分でやってしまうのも理事長の負担の増加の原因です。
管理会社はプロの実行部隊です。議事録の作成、議案の原案作成、専門知識（法律、会計など）の提供は、遠慮なく頼るのがベターです。
ただし、最終的な判断まで任せてしまうと丸投げになってしまいます。
理事長は「私はこうしたい。この方向で進めてください」と明確に指示を出すことに集中しましょう。

まとめ：理事長もみなさんと同じ住民です

マンションの理事長は現役管理員のりす丸が見ていても、本当に苦労が多い役職です。
毎年理事会で理事長を選任するのですが、その時に管理会社の担当が「全部私たちがサポートするので安心してください」と説明しているのを何回も見かけています。
はっきり言いますが、この甘い言葉を信じてはいけません！

理事長といっても一人の住民です。マンション管理に詳しいわけでも建築や設備に詳しいわけでもありません。
そんな中で、「引き受けた以上は一生懸命やろう！」と頑張っている方がほとんど。

住民の皆さんには理事長の苦労を少しでも理解し、協力する姿勢を持っていただけると嬉しいです。そして、理事長になったときには「一人で抱え込まず、みんなで支える」ことを意識していただければと思います。