分譲マンションの一室をオーナーから借りて住む「分譲賃貸」。
立地も設備もハイグレードなマンションを購入せずに月々の家賃で利用できるので、とても魅力的に思えます。
りす丸のマンションも居住者のおよそ3割が賃貸入居者です。
たしかに、見た目も設備もワンランク上の暮らしができそうで、とても魅力的に映ります。
しかし、現役管理員が実感しているのは「分譲賃貸入居の落とし穴」、入居前には気が付かなかったデメリットがたくさんあります。
現役管理員としても、「分譲賃貸入居の住民とのお付き合いの仕方はとてもむずかしい」と感じる場面が少なくはありません・
今回に記事では、あこがれのハイグレードマンションに入居できる「分譲賃貸」の住んでからわかる落とし穴に関してわかりやすく解説します。
分譲賃貸とは?分譲マンションに「借りて住む」という選択
「分譲賃貸」とは、マンションの一室を購入したオーナーが、何らかの事情で賃貸として貸し出している物件です。
入居者が借りる方法は、
- 仲介会社(不動産会社)を通じて賃貸契約をする方法
- オーナーと直接契約する方法
などがあります。

一般的な賃貸と分譲賃貸との違い

分譲賃貸と言っても、一室を賃貸契約でかりることに違いはありません。
しかし、現役管理員の視点から見ると様々な違いが見えてきます。
まずは「賃貸」と「分譲賃貸」の違いを一表にしました。
| 一般的な賃貸マンション | 分譲賃貸マンション | |
|---|---|---|
| 建物の所有者 | 大家さんもしくは不動産会社など | 区分所有者(部屋ごとに異なる) |
| 管理の主体 | 大家さんが委託した管理会社 | 管理組合 |
| ルール(規約) | 賃貸借契約書のルールが主 | 管理規約・細則 |
| 住民の属性 | 居住者は全員賃借人 | 「所有者」と「賃借人」が混在 |
| トラブル対応 | 管理会社が窓口として一括対応 | 専有部は原則自己責任 |
| コミュニティ | 希薄。出入りが激しい | 所有者同士の独自の繋がり |
| 施設利用の制限 | 入居者は全ての施設を利用可 | 賃借人は制限される場合がある |
| 入居時の手続き | 比較的簡易 | 複雑、 理事会への届出や引越し制限あり |
| 現場での立場 | 「お客様」として扱われる | 「占有者」(使用する方) |
入居者は賃貸契約を結んで住みますが、建物の管理主体はあくまで「区分所有者で構成される管理組合」です。
つまり分譲賃貸の入居者は、
- 住んでいるがオーナーではない
- 管理組合の構成員ではない
- 管理会社から見てお客様ではない
という、少し宙ぶらりんな立場になります。
この構造が、さまざまな問題を発生させる原因です。
分譲マンションに住んでいても「管理組合員ではない」立場

分譲マンションのオーナー(区分所有者)は、一室を購入すれば居住の有無にかかわらず自動的に管理組合員になります。
しかし、分譲賃貸入居者は、実際に住んでいても組合員ではありません。
この「管理組合員であるかどうか」が、区分所有者と賃貸入居者の大きな違いを生むポイントです。
マンションはオーナーの集まりである「管理組合」が運営のルールをすべて決めます。
逆に「組合員」ではない賃貸居住者は、入居してから思わぬ落とし穴に気づいてしまうことになるのです。
管理員は知っている、分譲賃貸の落とし穴
マンション管理員のりす丸の本音を言えば、「分譲賃貸での入居はあまりおすすめできない」という思いです。
その理由は、管理組合員ではないという不便さが落とし穴になるからです。
りす丸が勤務したマンションでの体験に基づいて記事を作成しています。管理規約やルールはマンションによって違うので、あくまでも参考までにお読みください。
ここで紹介する事例は、あくまで“構造的な情報不足”が原因で起きているケースです。
賃貸入居者の多くはルールを守って生活されています。
賃貸入居者は契約ができない

マンションの駐車場や駐輪場を使用する際には、管理組合と利用契約を交わして使用料を支払うことになります。
この契約が可能なのは原則として区分所有者のみ。賃貸入居者は駐車場や駐輪場を直接契約することができません。
これらの契約は管理員が窓口として管理をしています。
駐車場や駐輪場を使用する際に、区画が開いていたとしても、その場で賃貸入居の方にご紹介するわけには行かないのです。
空き状況を確認した後は、オーナーである区分所有者からの申し込みをお願いすることになります。
この仕組みを理解されていない方が意外と多くて、説明にはいつも一苦労します。契約主体がオーナーなので、安易に月々の使用料をお伝えするわけにも行きません。
りす丸なかには、「使うのはこちらなのに、なぜ契約できない!?」」とお怒りになる方も
コールセンターも受付できない


りす丸が勤務しているマンションの管理会社では居住者からの相談を受け付けるコールセンターを開設しています。
専有部内の小修繕や困りごとの相談、電球類やカーテンレールの交換などの作業も承っています。
ただし、このコールセンターを利用できるのは区分所有者のみ。賃貸入居者は残念ですが利用できません。
マンションの掲示板には、「困ったときはコールセンターへ」のポスターが掲示してありますが、そこには「区分所有者のみ」とは表記されていません。
しかし、電話をしてみると、「オーナーを通して依頼してください」の回答が。これでは、賃貸入居の方が疑問を感じるのもある意味当然です。



賃貸居住者からの「どうして?」という質問には、正直りす丸も説明に困ってしまいます
理事会にも総会にも参加できない


賃貸入居者は管理組合員ではないので、理事会にも総会にも参加できません。
また、理事会や総会の議事録も配布されないので、規約や細則の変更があってルールが変わっても寝耳に水の場合が少なくはないのです。
駐輪場や集会場利用のルールが変更になっても、気が付かないのも無理はありません。
※理事会・総会の議事録は全住戸に配布されているマンションも少なくはありません。あくまでもリス丸のマンションの事例です。


管理員が現場で感じる「分譲賃貸の違和感」


管理員として勤務をしていると、たしかに一部の賃貸入居者には違和感を感じることがあります。
現場で実際に起きている「あるある」事例をご紹介します。
現場が頭を抱える「賃貸入居者あるある」
「今日から入居です」と突然現れる引越しトラック
事前の引越し届もなく、養生(共用部の保護)の準備もしていない。慌てて駆け寄ると「仲介会社から何も聞いていない」と怪訝な顔をされる。
多くのマンションでは引っ越しなどの作業をする場合には、事前申請をする決まりになっています。
この情報が入居者まで届いていなかったのが原因です。
決して引っ越してこられた方が悪いのではありません。
ゴミ置き場のルールを守らない
「高い家賃を払っているんだから、分別は管理員の仕事だろう」と、未分別のまま放置。注意をすると「サービスが悪い」と逆に叱責されることも。
漏水調査に「休業補償」を求める権利意識
「自分の住戸が原因かもしれない調査のために会社を休むのだから、その分の給料を補償しろ」と詰め寄られる。共同生活における協力義務という概念が、そこには存在しません。
こうした、どこか「お客様」として振る舞い、マンションのルールを自分事として捉えていない方は確かにいらっしゃいます。
しかし、その原因をよくよく考えると、単なる個人の性格ではなく、「そもそも誰がどういう形で住んでいるのかが不透明」という契約上の大きな闇に突き当たります。
マンションで発生しがちなトラブルベスト5と対処法を現役管理員の視点でまとめました。
こちらの記事も合わせてお読み下さい。
「誰が住んでいるか分からない」契約形態のグラデーション


管理員がこれほどまでに違和感や「捉えどころのなさ」を感じるのは、分譲賃貸の貸し方が様々で、現場がその実態を把握しきれない仕組みになっているからです。
【タイプA】仲介会社を通した「正式な賃貸借」
不動産会社が間に入り、契約を結ぶ形です。
仲介会社や管理会社からマンションの現状や規約、ルールなどをきちんと伝達されているので、同じマンションの住民としてマナーをもって生活していただけます。
【タイプB】知人紹介・親族間などの「個人間貸借」
「空いているから知り合いに貸す」といった、個人間での契約です。
管理会社では入居者の変更に気づけない場合が多く、満足なご情報提供ができません。
「引っ越しの当日に初めて入居者変更を知った」、「駐車場の契約申し込みで名前が違っているので気が付いた」など、事前に把握できないケースが多いのが事実です。
【タイプC】法人名義の「社宅・寮」としての利用
法人名義の区分所有者が、社員を交代で住まわせる形です。入退去が頻繁なため、管理員が名簿を更新する間もなく住民が入れ替わります。
住んでいる社員は「会社の施設」を使っている感覚で、近隣住民への挨拶や、マンションの歴史やルールには全く関心がありません。
とらえどころがない賃貸入居者がいる現実
ほとんどの賃貸入居者はタイプA、きちんとした賃貸契約を結ばれて「入居者名簿」なども提出いただいています。
しかし、タイプB、タイプCの場合には、必要書類が未提出なケースが多いのは事実です。
そうすると入居者のお名前も連絡先もわからないので、何かあった場合にもコミュニケーションがとれずに困ってしまうこともしばしば。
また、管理会社も捉えようがないので、入居の際の注意事項やマンションでの生活ルールなども伝えることができません。
特にタイプCが現場での把握が困難


タイプCの賃貸入居者は生活サイクルもライフスタイルも嚙み合わない傾向があり、トラブルにつながるケースも実際に発生しています。
ただし、ここで重要なのは、職業やライフスタイルそのものが問題なのではありません。
入退去の頻度が高く、管理側が居住実態を把握できない構造がトラブルを生みやすくしているのです。
ほとんどの賃貸入居のかたはきちんとルールを守っているなかで、一部のとらえどころがない入居者が「賃貸はルールを守らない」というイメージを作り上げているのです。



ほとんどの賃貸入居の方はマンションのルールをしっかりと守って生活されています。
区分所有者と賃貸入居者との目に見えない境界線
管理員が感じる一部の賃貸入居者に対する「とらえどころがない」という違和感は、マンション住民も同じように感じてしまいます。
その違和感が区分所有者と賃貸入居者との目に見えない境界線を作り上げてしまう場合も。
一部のルールを守らない方のイメージが、いつの間にかすべての賃貸入居者のイメージへとすり替わっていくのです。
理事会で生まれる「賃貸の人たちだろう?」という空気


理事会でマナーの問題が議題に上がると、真っ先に「どうせ賃貸の人たちだろう?」という言葉が聞こえることがあります。
残念ながら、りす丸が経験した数か所のマンションではいずれも、所有者の方々は、賃貸入居者に対してマイナスイメージを抱いていました。
- 一時的に通り過ぎるだけの人たち
- 自分たちの資産を大切にしない人たち
といった見方は、複数のマンションで共通しているようです。


管理会社は賃貸入居者に冷めている?


こうした分譲賃貸の現場感覚を管理会社はどのようにとらえているのでしょうか。
それは、「賃貸入居者にはあまりかかわりたくない」というのが管理会社の本音です。
確かに賃貸入居の方をしっかりと把握するのは、現在の分譲マンションのルールではとても難しいのが現実です。
そしてもう一つ、管理会社では「お客様=管理費を負担してくれる区分所有者」という考え方が強く根付いているようです。
りす丸は以前、賃貸の方の件で管理会社に相談した際に、「あなたたちから給料をもらっている訳ではない」と言えばいい、と言われたことがあります。
一部の、あまりにも現場を軽視した担当者の発言ですが、こうした冷ややかな構造が根底にあることを象徴する出来事でした。
その時には「同じマンションの住民じゃないですか…」と思わず言い返してしまいました。


管理員として正直に伝えたいこと


現場に立つ人間として断言します。トラブルを起こすのは、ごく一部の方だけです。ほとんどの賃貸入居者の方は、規約を守り、静かに暮らしています。
問題の本質は「個人」ではなく「仕組み」にあります。
入居時に誰もルールを教えず、入居後に誰も情報を伝えない。
この状態が賃貸の方のちょっとしたルール違反につながっているのは間違いありません。
そこで、りす丸から正直にお伝えしたい提案があります。
管理会社の皆様へ
賃貸入居者に対しても必要な情報がきちんと届く仕組みづくりが必要です。
- 入居前のルール説明
- 管理規約・使用細則の提供
- 引っ越し手続きの案内
これらが徹底されれば、賃貸入居の方もスムーズにコミュニティに馴染めます
管理組合の皆様へ
賃貸入居する方を「すぐに出ていく人」ではなく、「同じ住民」として迎え入れましょう。
- 掲示物の工夫
- 情報共有の仕組み
- 住民全員が参加できるコミュニティづくり
賃貸入居者が同じ情報を共有できる環境が整えば、マンション全体の雰囲気も必ず良くなります。
まとめ:知ってほしいのは「落とし穴」ではなく「ルールの存在」


分譲賃貸で入居を考えている方にとって、今回の記事は少し驚く内容だったかもしれません。しかし、これらはすべて「知っていれば防げる」ことばかりです。
そして、高級と言われるマンションほど賃貸入居者に対する見えない壁が高いように感じています。
これから分譲賃貸でお住まいを探すのであれば、以下の点をぜひチェックしてください。
- 駐車場の空き: 賃貸人は後回しではないか
- ゴミ出しルール: 24時間OKか、マンション独自のルールはあるか
- 共用施設: コンシェルジュやラウンジの利用制限はあるか
- 連絡先: 設備の故障時、賃貸人も利用できる窓口はあるか
「同じマンションの住民じゃないですか…」 りす丸が管理員として大切にしているこの言葉。
あなたが分譲オーナーでも、賃貸入居者でも、このマンションで安心して暮らしてほしいという願いに変わりはありません。
もしこれから分譲賃貸への入居を検討されているなら、ぜひ一度、管理室の扉を叩いてみてください。
「ここはどんなルールがありますか?」と聞いてくれる入居者さんを、私は全力でサポートしたいと思っています。



分譲賃貸での入居は事前調査をしっかりと!
りす丸の実体験ではデメリットのほうが多そうです。
分譲賃貸での入居に関するよくある質問(現役管理員が回答)
- マンション内のルール(ゴミ出しや駐輪など)で分からないことがあったら、誰に聞くのが正解ですか?
-
まずは「管理事務室」へお越しください。
賃貸仲介会社はマンションの細かいルールを把握していないことが多いので、現場の管理員に聞くのが最も正確で早いです。 - 部屋の設備(エアコンや給湯器)が故障しました。管理員さんに言えば直してもらえますか?
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残念ながら、管理員やマンションの管理会社では修理の手配ができません。
専有部の設備は、オーナーの所有物です。まずは「賃貸借契約書」に記載されている連絡先(仲介会社やオーナー指定の管理会社)へ連絡してください。管理員にできるのは、緊急時に水やガスを止めるお手伝いまでとなります。 - 掲示板に「議事録は管理室で閲覧可能」とありますが、賃貸の私も見せてもらえますか?
-
はい、閲覧可能です。
法律上、賃貸入居者も「利害関係人」に含まれるため、閲覧を拒まれることはありません。ただし、コピーを配布できるかどうかはマンションごとの運用によりますので、まずは「内容を確認したい」と管理員に声をかけてみてください。 - マンションの避難訓練や夏祭りなどのイベントに参加してもいいのでしょうか?
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もちろんです。ぜひ参加してください!
「賃貸だから……」と遠慮される方が多いのですが、災害時の協力や防犯の観点からも、顔見知りになっておくことは非常に大切です。自治会費などを払っている場合はもちろん、そうでなくても「同じ住民」として歓迎されるはずですよ。 - 入居する前に管理室を訪問したほうが良いですか?
-
必須ではありませんが、一言いただけると非常に助かります。
引越しの際は、トラックの駐車場所やエレベーターの使用ルールなど、お伝えしたいことがたくさんあります。また、事前にお顔とお名前が一致していれば、不審者と間違えられる心配もなくなります。
笑顔でご挨拶をいただけるだけで、私たち管理員も「全力でサポートしよう!」という気持ちになります。

